幼児音楽教育のあり方、特に兄弟姉妹でも、ケースは様々なようです。そして、いよいよヴァイオリンを通じて世界へと道は広がります。##########################【娘とヴァイオリン】➁ この数年間の実感として、小さい子が楽器を習うという行為は、毎日楽器を開けて準備をし、音を出し、過去のレッスンの振り返りと次のレッスンに向けての準備をする練習になり、その時々で何をしなければならないのかを考える訓練になっている事です。 また、それは音楽を表現する演奏とはまた別で、多分、次女はその段階が不得意なために挫けてしまったように思います。塾に通う今の生活でも如実に表れています。諸々面倒くさいという事なのでしょう(苦笑)。 どんな習い事にも内容に入る前には準備やウォーミングアップがあり、終了後には片付けやクールダウンがあります。その部分が嫌という事では、何も出来ないのだと今更ながら伝えている今日この頃です。 さて、長女ですが新しい先生になってから初めて‘基礎練習’に向き合うようになりました。ピアノを習った事のある方々はお分かりかと思いますが、ハノン教本やエチュードなど、技術の獲得の為に反復練習等を地道に行うものです。これらで挫けてしまった方も多いのではないでしょうか?小2の終わりに「クロイツェル教本」に入り、現在小6になりそろそろ終わりますが、丸5年近くもかかっています。その他、カールフレッシュという音階教本やセヴシックという教本なども用いながら曲に取り組む毎日です。漠然と音楽中学へ進学したい希望を示していたので、小5に上がる頃からは「毎日3時間以上練習」という目標を掲げ取り組んでいます。 今は、練習の内容についても日々考えながら取り組んでいます。ダラダラと時間をやり過ごすようでは意味が無いですし、なによりもったいないからです。 2011年、某コンクールの記念演奏会がウィーン国立音楽大学内で開催されました。私が出演させて頂ける事になり、渡墺する時に思い切って娘も連れて行きました。その時、ウィーン在住の友人・先生のお蔭でエドゥワルト・チェンコフスキー教授の個人レッスンを受けるチャンスを頂きました。娘・小3夏の話です。 小さかった娘にとって大きな先生がお部屋に入ってこられたときは緊張の極みでした。90分間、集中し続けられたことを褒めて下さり、手の厚み、大きさ、レッスンに向かう姿勢から「あなたは生まれ持ったヴァイオリニストです。ただし、良いヴァイオリニストになる為にはいばらの道になると思うけれど頑張れるかな?」と優しくお話し下さり、示してくださる指導に通訳してくれた友人共々感動しました。魔法にかけられたような時間が流れました。 チェンコフスキー先生が若い頃、ドイツで小さな子を教えていらしたというお話を伺い、的確に示して子ども達に伝える事が出来るのも、確固たる技術・音楽を持っていてなおかつ子ども達に示す技術も兼ね備えていなければ出来ない事なので、そのような先生につく事が出来るのはラッキーな事だと心から思いました。 ヴァイオリンは音程の所在を示す‘フレット’が無いので、音は自分の耳を頼りに探し当てなければなりません。また、弓をコントロールする右手の動きは音色を決定します。子ども達に的確に示し、学ばせるには、指導者を選ぶと感じます。たった少しの声かけでも音が劇的に変化する事をチェンコフスキー先生のレッスンで実感しました。帰国後、今習っている先生は基礎を大事に丁寧に教えて下さっている方である事も改めて判り、娘の意欲と努力が伴えば、近いうちにまたウィーンへ習いに行きたいと考えました。 そして、今年2月。実に2年半ぶりに渡墺。ウィーン国立音楽大学で開催される冬期セミナーに思い切って親子で受講生として参加しました。チェンコフスキー先生はその時と変わらず優しくレッスンして下さいましたが、娘の準備(緊張もあったでしょうけれど…)に対して「暗譜は当たり前、私はあなたにとって1年分それ以上の指導をしたいのだから、もっときちんと見て来なければいけない」と叱咤して下さいました。2年前とは別な厳しさがありました。 物凄く上手な同級生(5年生)と6年生のお子さんが参加されていて、レッスンも大人顔負けの内容に正直圧倒されました。娘には、何がいま大事で何をするべきかを伝えながら指導して下さり、私達母子もこれからどのように取り組んだらよいかを考えさせられた日々になりました。滞在中大学内の2会場で演奏させて頂く機会を得、私はモーツァルトのオペラアリアを歌わせて頂いてから、ヘンデルの「9つのドイツアリア」で娘と共演させて頂きましたが、再び受講出来た時には、娘自身がソロで出演できるように力を付けなければならないと思います。メンタル面の成長も個人差があるので、表現欲求が伴えば、日々の基礎練習と比例して演奏クオリティが上がってきてくれるものと信じて娘の成長を待とうと思います。次回いつ行けるか未定ですが、そんな事をイメージしながら過ごしています。さて。2回にわたり【娘とヴァイオリン】で話してきました。我が家の体験談に過ぎず、十人十色の体験談や音楽のアプローチがあると思います。習い始めて以降、これで良かったのかしら?と不安になる事も多々あります。その時々でどのように取り組んでいたかを振り返り、今後どのように向き合っていきたいかという思いと娘を観察し会話の中で確認しながら‘リフレーミング’していく事で、納得のいく部分で問題解決でき、家庭それぞれのスタイルで定着し根付いてゆくものだと感じます。無理をして背伸びをさせたり、我慢をさせると本来楽しみながら取り組めたことも苦痛になってしまい行き詰まってしまいます。 娘自身、少々反抗期なのか、私に色々文句を言ってくる事も多々ありますが、娘なりに色々考え工夫をしながら練習に取り組んでいるように感じます。最近は人前で演奏する本番のたびにたくさんの反省材料が生まれてくれるので、その事を糧に、日々自分が満足のいく演奏ができるようにイメージしながら励んでいるようです。