パリ郊外で仏人のパパ、日仏ハーフの息子・アルチュールくんと3人で暮らす順子さん。アルくんの舞台出演を通じて、日本とフランスの子育て、教育に対する価値観の違いなど、様々な思いを綴っていただきます。いよいよ本番に向けて稽古が始まります。演出家との顔合わせ、そして生まれて初めての舞台へ。演出家と初対面新学期が始まって翌日、学校が終わってから電車でお稽古に向かいます。電車の中でおやつを食べながら、宿題をしながら、親子二人の楽しみの時間が増えます。今日は、演劇が行われる、パリ15 区の日本文化会館で演出家のクロードレジ氏のもと、初回の稽古を行う日。演出家のクロードレジ氏のOKがないと、これまでのプロセスはすべて無効、出演不可能です。楽屋に通され、舞台衣装(部屋着)に着替え、なにも分からないまま、いよいよ舞台裏に向かいました。このとき息子はどんな心境だったのでしょうか。説明なしのいきなり本番稽古だったのですから。舞台は真っ暗です。音一つありません。下は砂で埋め尽くされています。真っ暗の中、砂の上を靴下で歩くため、足下に違和感を感じます。息子はほとんど下を向いて歩いていました。物語は一番重要なシーンから始まります。母親と子供が室内へと歩き、母親が子供を眠りに導くシーン。これが唯一の息子の動きです。母親より一歩下がった歩調、呼吸を合わせた歩き方、筋肉を使い、ゆっくりすぎるほどの動作で横になるテクニック、そして1時間30分程、全く動いてはならないのです。下を向いて歩かないように指導を受け、演出家のクロードレジ氏、役者の方々よりOKを頂きました。筆者プロフィール:エルンスト順子フランス在住9年目。欧州ビジネスコーディネータ。企業の営業推進部、国際輸出入業務を経て、現在、欧州市場進出、企業の市場開拓ビジネスに携わる。最近の大きな関心事は、「10年後に子供にどのようになっていて欲しいのか」日本語の勉強方法、モチベーション維持、楽しく学習する環境など、同じ境遇の日仏家族と語り合う。思春期までもうちょっと。今は子供との貴重な時間を優先している。