子どもの習い事に対する考え方、各家庭それぞれだと思いますが、改めてその意義を見つめ直してみましょう。
音楽教育に関心あるママ・パパに、様々なケーススタディを提供する子育てエッセイ。
前回のピアノの選び方に続いて、今回はヴァイオリンの選び方。高くて手が出ない!のイメージが強いけど、本当のところはどうなのかしら?
【楽器選びについてその➁ヴァイオリン編】
前回は、楽器を習いたいと思われている方の為に、楽器選びについて少しお話しが出来たらという切り口からピアノの事についてお話ししました。
付け足しておくべきことは、お子さんにピアノを習わせようとする場合のタイミングも、既出のソルフェージュの話ではないですが良く見てあげて欲しいと思います。実は、コンサートグランドの鍵盤の重さと、練習用グランドピアノの鍵盤の重さは正直違いますし、楽器の個性も様々ですから、色々経験を踏まれるとおのずと好みも生まれてくると思います。
お子さんの心身の成長と実技の上達タイミング、好みの方向性によって何度かチェンジ出来た方が好ましいという事になってくるはずなので、それならば導入期は・・・という事で、私の場合、ピアノのタッチに近い(=木の重みをちゃんと感じ、キーレスポンスも嘘っぽくないタイプの)電子ピアノを進める事が多いという思考に行きついています。
更には、最近のお子さんは、機械の操作も得意な子が多いので、自分でピアノパートを弾いて録音し、別パートを別音色で弾いて・・・といった、連弾ごっこ的な遊びもできるので、別な意味での楽しみも生まれたりします。
何事もお稽古事は辛く、厳しいイバラの道的なイメージになりがちですが、楽しめなくては損をすると言う気持ちで取り組んでもらえたら、レッスンにしても、練習にしてもより充実した時間を過ごせるような気がします。
さて、他の楽器の事について、我が家の経験談から少しお話ししたいと思います。今回はヴァイオリンです。この楽器は、フルサイズ(4/4)と呼ばれる大きさが本来の大きさで、持つ事が出来るのはだいたい145cm以上と言われています。早期教育の最たる象徴とされる楽器ですが、最初からこのサイズはとてもじゃないけれど持てません。小さい頃は体の大きさに合わせて‘分数ヴァイオリン’と呼ばれるミニチュア楽器が存在します。顎当てに顔を乗せ、構える姿勢を取り、渦巻と呼ばれる先端のスクリュー部を手のひらを覆うようにして持った時に、ややゆとりのあるような感じで持つ事が出来る物を選ぶのが好ましいとされますが、大体の目安として、1/16(105cm以下)、1/10(105cm~110cm)、1/8(110cm~115cm)、1/4(115cm~120cm)、1/2(125㎝~130cm)、3/4(130㎝~145cm)と、実にフルサイズに至るまでに6サイズも存在し、成長に合わせて持ち替えてゆかなくてはなりません。
我が家の子供たちも当時4歳の長女には1/4サイズ、3歳の次女は1/8サイズから始め、その楽器を今でもファースト・ヴァイオリンとして保管してあります。その後、次女は長女のものをお下がりでもらう形になりながら、いずれはやめてしまう事になりますが、細々続け、長女は小1の時に1/2、小3で3/4、小5でフルサイズを持つ事になりました。気になるお値段なのですが、これまた色々ありまして、入門者に良いモデルは・・・と聞かれると、販売店で正直差があります。YAMAHAや山野楽器、島村楽器、クロサワ楽器等大手販売店には、入門者モデルが販売されていますので、色々な店舗を巡ってみて予算・イメージに叶うものを選んでみるのも良いと思います。というのも、毎日練習する代物なので、中々買い換えるにも、使い込んでいくうちに愛着がわいてくるものだからです。最初の楽器は、先生に付き添って頂いて選定して頂く事もお勧めします。
ヴァイオリン専門店にも足を踏み入れたいところですが、全くの初心者で廉価なものを見つけたい場合には、敷居も高く感じる事でしょうし、時期尚早な気がします。
子ども達も最初は色々見た結果、近くにクロサワ楽器があったので、最初は弓や松脂、ケース付きのセットが3万円程度で購入できたと記憶しています。そこにいらっしゃる店員さんの温かい感じが良かったのですが、弓の毛替えや、メンテナンスなどに伺う際もその空気は変わらず、今ではもう9年ほどのお付き合いになります。年月が経つと、成長を来店の度に一緒に感じて下さっている事に気づかされます。購入した店舗にメンテナンスをお願いする事になると思うので、店員さんとの相性も大事!という人には、ポイントにしてもらいたい点です。(ちなみに、メンテナンスでお店に伺ったついでに、待っている間など、気になる楽器を触らせて頂けたりもしますから、雰囲気選びは大事かもしれません!)
また、正直、お母様がヴァイオリンという楽器を知らないで始めるのであれば、色々な意味でメンテナンス面が行き届かない=初心者ゆえの無知で楽器を傷めてしまったり、落下などの事故がどうしてもが起こりやすいので、音の良さや楽器のクォリティより、そういったリスクを背負っても大丈夫な楽器で十分かもしれないと思います。(小さなころは、安い楽器で良かったと思う瞬間が何度かありました。)
その後、長女のみ1/2へのステップアップは数万円アップの5万円程度の物を、先生と共に選びました。3/4サイズへのアップは、小さなコンクール等にも出るようになったという事もあり、ドイツの有名工房の新作(といっても量産品。)に目が留まるようになり、14万弱のものを買って練習させていました。(この価格帯がいわゆる大人の方が始める初心者用のセットとしては平均的かもしれません。)
このサイズになってくると、比較的鳴りの良いオールド・ヴァイオリンもかなりの数出回っています。当たり前に数十万クラスになるので、正直驚かされたのですが、コンクールに参加している上手な子ども達は、そのような楽器を購入の他、レンタルを利用したり、先生からお借りしているようです。そんな事も知識として持つようになると、気になりつつ過ごしてしまうもので、そうしているうちに出会いが生まれてしまいました・・・弓の毛替えに行った時の事、待っている間色々話をしているうちに、1900年前後に出来たという3/4サイズのドイツ製を見つけてしまったのです。
試奏させて頂いたら、音も良いので、少しは音を聞く事で上達してくれることを信じて、それまでの楽器を下取りして頂き、奮発して我が家に招く事になりましたが、結局娘の成長が早く、1年も使わないうちに(それこそ分割払いを払い終える前に・・・)フルサイズになってしまいました。
ちなみに、楽器を最良の状態で鳴らすためには、弓との相性も大事です。楽器に合ったものを選ばなくてはなりませんし、そこに好みが入ると値段もそれなりにしてきます。上達してきてそれなりの楽器を選ばれたときには、弓の事も併せて考えながら購入計画を立てなくてはなりません。
小5の6月、知人の所有楽器をお借りする形でフルサイズ楽器に移行し、その年の夏に縁あって、日本バイオリン製作研究会で会長を務めていらっしゃる川原邦也氏の自宅兼工房に伺い、娘自身が選定して川原さん作のヴァイオリンにご縁を頂き現在に至ります。ヴァイオリン制作に関して、楽器店では話題に触れる事はないのですが、実際に作っておられる人の話を伺うと、とても深く、興味深いです。(このお話はまたの機会に改めて…)
同じような形・規格に見えますが、量産品でない限り、1つとして全く同じではなく、それぞれに個性があります。魂柱と呼ばれる、上板と下板を支える丸いつっかえ棒のような棒の位置が少しずれただけでも、音の鳴り方が変わってしまったり、変化を遂げてしまう繊細な楽器です。
お値段のする楽器は、それこそ有名な‘ストラディバリウス’といった億単位という雲のまた上の世界が存在する事は皆さんご存知の事と思います。そのような楽器には系譜があり、伝統を脈々と受け次いでいる職人さんによって技術が守られています。1つ1つ手作りで創り上げられた楽器は、新作であれど値が張ります。価値が評価されているからです。
しかし、何百年も前に作られたものなのに、何故今美しい音を奏でる事ができるのか・・・実は科学で解明できていないといった話も聞きますし、色々な意味で奥が深く神秘的です。
余談になりますが、日本の音大を卒業する方々の持つヴァイオリンも、数百万~数千万クラスは当たり前だそうで、これまたクラッときますね。
値段で良し悪しはあまり言いたくありませんが、普段、私たちが目にする有名な演奏家や、オーケストラに乗っている楽器は、舞台に乗せることが出来る=一定の価値評価されている楽器という事になります。維持やメンテナンスにも費用がかかりますので、そういう事も知って頂くと、コンサートチケットは無駄に高いものではないという事も理解していただけるのではないでしょうか?演奏家の方々は、このような楽器を各々維持管理しながら、日々修練し、体調管理し、お客様の前に立っています。
最近、ソロ奏者の演奏を聴きながら、楽器職人さんが1つ1つ思いを込めて造りあげている作品に、所有する演奏者の確かな技術・表現力による演奏への思いによって、奏でられる音楽に生命が与えられているのだとつくづく感じています。
もし、ヴァイオリン演奏を聴く機会がありましたら、是非そういう視点で聴いてみて下さい。楽しみが広がるかもしれません。
ちなみに、億単位の楽器は、貸与されている事も多く、上手な人には‘巡ってくるもの’なのだと思います。
我が子に巡ってくるか……う~ん、厳しいです(苦笑)。
色々話は尽きませんが、今回はこのへんで…
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EduKidsボードメンバー:土屋友紀 プロフィール
2児の母。年長よりピアノを始める。高校音楽科で作曲、大学で楽理を学び、大学院より声楽に転向し現在に至る。
コーラスやミュージカル、ソロ歌唱指導や、ソプラノ歌手としての研鑽を積みながら活動中。
2009年第24回全国童謡歌唱コンクール関東甲信越地区決勝大会最優秀賞受賞を機にTsucchy’s土屋ファミリーとして、家族で演奏活動を開始。
昨年からは父含む親子4人で楽しく音楽を表現し、伝えてゆくことをモットーに活動している。
これまでに横浜、福島、熊谷、東京、桑名、与論等、形態様々な演奏会に出演。
メンバーは、母(ピアノ・ソプラノ、作編曲)、長女(小6、ヴァイオリン・うた)、次女(小5、うた・トーク等)、父(ギター)。
2013年4月 レインボータウンFM 'シンクロプラス'「未来の演奏家たち」コーナーにゲスト出演。
http://youtu.be/eib3XEmcUxo
2013年7月31日神奈川新聞欄掲載。(「歌で強める地域の絆」 中区・土屋ファミリー)
横浜市・中区地域福祉保健計画テーマソング「中なかいいネ!」ファミリー歌唱。CD一斉配布中。
(参考:http://www.city.yokohama....y/iine-plan/info.htm
<Facebookページ>https://www.facebook.com/Tsucchys