東日本大震災をきっかけに福島県相馬市で生まれた日本エルシステマ・相馬子どもオーケストラ&コーラス。音楽を通じて共に学び、教えあい、素晴らしい経験を積んできた子どもたちが、この3月29日に大きな舞台を踏み、聴衆の大喝采を浴びました。エル・システマ出身で世界的指揮者のグスターボ・ドゥダメル氏の指揮の元、ロサンゼルス・ユース・オーケストラの子どもたちと一緒に、ドヴォルザーク交響曲第8番に挑戦したのです!その「公開リハーサル&コンサート」の様子をレポートします♪************************************エルシステマとは:南米ベネズエラでホセ・アントニオ・アブレウ博士によって始められた社会変革を目指した音楽教育組織。家庭の経済状況にかかわらず、すべての子が無償で集団での音楽教育が受けられる仕組みが原点で、子ども達が自ら協調性や規律を学びながら、目標に積極的に取り組んでいく姿勢をはぐくんでいくことによって、希望や誇りを持てることを目的としている。世界的に活躍する若手色紙者グスターボ・ドゥダメルなど多くの一流音楽家を輩出しているだけでなく、子ども達を犯罪や暴力から守り、学業面などにポジティヴな影響を与えている。***************************************会場は六本木サントリーホール。こんな一流コンサートホールの舞台でで演奏するなんて、考えただけでもドキドキします。それに、今回演奏するドヴォルザークの交響曲第8番の第4楽章。美しい旋律が印象的ですが、実際に演奏するとなるととても難しそうです。約2000席の会場はほぼ満席、オーケストラの子どもたちは皆Tシャツ姿で入場です。一方合唱団は舞台裏手側の客席でスタンバイ。さぁコンサートが始まります。まずは合唱団による「さくらさくら」のコーラス。まさにこの季節ならではの曲ですが、子どたちの澄み渡るような歌声にうっとり。終わった後の大拍手の中、合唱指揮の古橋先生の会心の笑顔が印象的でした。そして、子どもたちと同じくTシャツでドゥダメルさんの登場です。ドヴォルザーク交響曲第8番について「簡単な曲ではないですよね?でも桜のように美しいと思いませんか?」ドゥダメルさんの言葉に頷く子どもたち。「さぁ、歌うように演奏しよう!」ドゥダメルさんの掛け声で演奏の始まりです。ヴァイオリン、チェロなどの弦楽器パート、クラリネット、フルートなどの管楽器パートと、パートごとに分かれて音を出していきます。「タンターンタタターン!」歌うようにメロディラインを口ずさみながら、この譜面でドヴォルザークが表現したい音楽を、子どもたちに分かるように伝えていきます。「カンタービレ!」(歌うように弾きなさいという意味)「違う違う、それじゃまるで救急車のサイレンみたいだよ!ウワーンウワーンって」笑いながらも音に対する要求は厳しいドォダメルさん。子どもたちはドゥダメルさんの言う言葉のひとつひとつを真剣に聞き取り、そして着実に自分のものにしていきます。観客は、ドゥダメルさんのユーモアあふれる指導ぶりに笑ったり、子どもたちの演奏の変化に拍手したり、普通のクラシックコンサートとは全く違う、「準参加型コンサート」を楽しんでいました。そしてあっという間にリハーサル終了。最後に合わせた第4楽章は、最初よりずっとずっと「歌うような演奏」でした。ブラーヴォ!!割れんばかりの大歓声の後、アンコール1曲目はチャイコフスキー「くるみ割り人形~トレパーク」。そして2曲目、相馬の子どもたちにとって特別な曲だというモーツァルトの「アヴェヴェルコルプス」。3.11を経て、様々な形で死と向き合う経験をした子どもたちの奏でる美しいメロディと清らかな歌声に、涙を押さえる聴衆の姿も見られました。終演後、鳴りやまぬ拍手の中、ドゥダメルさんの笑顔がますます輝いていました。さぁ、日本エル・システマの活動はこれからまだまだ始まったばかり。音楽という言葉を超えたコミュニケーションによって、彼らの世界はもっともっと広がっていくことでしょう。その軌跡には、きっと私たちが家庭教育で活かせるようなエピソードもたくさんあるはずです。これからも日本エル・システマの活動から目が離せません。::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::日本エル・システマHPhttp://www.elsistemajapan.org/PHOTOⓒFESJ/2015/Koichiro Kitashita